コオロギと住む男
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男はマンションに住んでいた。
男は大量のコオロギを飼っていて、大事に大事に育てていた。 ある日マンションの管理人に、男の部屋で異臭がする、という苦情が入った。 いくらチャイムを鳴らしても呼んでも返事はない。 しょうがないので警官立会いで男の部屋に上がると、男はコオロギの死骸に囲まれながら死んでいた。 全てのコオロギの死骸には針が打ち込まれていたという。 男に何があったのだろう? |
解説(ネタバレ防止のため答えを知りたい方は反転して下さい)
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男はコオロギを愛していた。
正確には、大好きなコオロギの中に一匹愛する者がいた。 男はコオロギ達に十分にエサを与えているつもりだったが、増えすぎた彼らには少なかった。 男がほんの少し出かけた時、コオロギ達の共食いが起きた。 そして男が帰宅すると、男が愛した者は死骸と化していた。 怒り狂った男は、愛する者を元に戻すために一匹ずつはたわたを針で掻き出した。 しかし、元に戻るはずもなく、男は絶望に身を委ねて自殺してしまった。 |